マディオ、布団に引きこもる

穏やかな五月晴れの午後。

暖かな日差しが差し込む部屋の隅で――

布団にくるまり、ガタガタと震えている男がいた。

「投資怖い……株怖い……まんじゅう怖い……」

オタ子

マディオさん、よっぽどトラウマになってるね……

かーくん

大の大人が、情けない……

布団の中からブツブツと声が聞こえる。

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……」

オタ子

ねえ、かーくん。結局マディオさんって、何がダメだったの?

かーくん

まず、買おうとしている企業のことを何も調べていない。

初心者なのに目先の値動きしか見ていない。

上がったら浮かれて、下がったらパニック。

いわばすべてがテキトーだ。この結果は必然だな。

オタ子

い、一刀両断だね。

「『素数』を数えて落ち着くんだ……

『素数』は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……

わたしに勇気を与えてくれる……」

「1……4……6……8……9……10……」

かーくん

全部間違ってるぞ……

かーくん先生と億り人

オタ子

でもさ、株を始めたばかりの人は、企業のどこを見ればいいの?

かーくん

最初から全部理解する必要はない。まずは基本だ。

オタ子

なるほど……株価だけを見てちゃダメなんだね。

かーくん

短期間の値動きだけを追いかけるんじゃなくて、その会社がこれからどうなっていくのかを見る。

企業を調べ、経験を積み、自分なりの投資判断ができるようになる。

そうやって時間を味方につけながら、地道に積み重ねていけば――

かーくん

いつか大きな資産を築けるかもしれない。

オタ子

大きな資産……

かーくん

世の中には『億り人』なんて呼ばれる投資家もいる。

オタ子

億り人?

かーくん

厳密な定義が決まっているわけじゃないが、

一般には投資で1億円規模の資産を築いた人のことだ。

まあ、初心者から見れば雲の上のような話だが……

それだけ投資には夢がある、ということだな。

かーくん

オタ子には言えんが……実は俺も目標にしてるんだよな……

オタ子

1億円……凄すぎて想像もつかないよ……

マディオのハチャメチャ脳内事情

――その頃。

布団の中のマディオは、別の世界を彷徨っていた。

そこは、本人ですら理解できない混沌とした精神世界――。

マディオ

ここはどこ?わたしはだれ?

謎の声

…ここは貴方…マディオの頭の中です…

マディオ

誰だ!?

天使

…聞こえますか… …聞こえますか… マディオ… マディオ…貴方の内なる天使です…

…いま… あなたの心に…直接…語りかけています… 聞こえますか…

… …貴方にとって投資はバクチです… …今すぐやめてください…

…バクチで… 爆死…プププ…やめて……

マディオ

おちょくってんのか!?

別の声

力が欲しいか!!

マディオ

うおっ…今度はなんだ?

悪魔

我はうぬの内なる悪魔。力の求道者。うぬは力が欲しくないか?

マディオ

どうでもいいけど俺の脳内ハジケすぎだろ。

力?株で勝てる力なら―

悪魔

我の拳は神の息吹!

“堕ちたる種子”を開花させ、秘めたる力をつむぎ出す!

美しき 

    滅びの母の力を!

マディオ

ちょっ!俺まだ欲しいとは言ってな--

悪魔から禍々しいオーラが放たれ、マディオを貫いた。

マディオに衝撃と共に激痛が走る。

マディオ

ぐわああああーーーーーーーーーーッ!!

天使・悪魔

ク…クロコダイ~~~~~~ン!!

並んだ天使と悪魔が、笑顔で手を振りながらふざけたセリフを放つ中

マディオの意識は急速に薄れていった。

マディオ

おまえら覚えてろよおおおおおお!!!!

ブラックアウトー。

マディオ復活?

そのとき――

布団が勢いよく吹き飛んだ。


「おれはしょうきにもどった!」

布団を振り払い、立ち上がるマディオ。

その顔は晴れ晴れとしている。

オタ子

わっ!!びっくりした!!

かーくん

……本当に戻ったのか?

「俺は間違っていた……

株なんてテキトーに買えば、誰でも簡単にパリピでセレブになれると思っていた……」

「だが、違ったんだ」

「企業のことを調べ、自分の頭で考える。

目先の値動きに振り回されず、コツコツと経験を積んでいく。

俺に足りなかったのは、それだったんだ……!」

「俺は――心を入れ替える!!」

かーくん

よ、ようやく分かってくれたか。よよよよよよ……

オタ子

なんか急に人が変わったようにしか見えない……

あ や し い 。

オタ子

まあ、でも立ち直ってくれたことは良かったかな。

三者がそれぞれの思いを抱く中――

マディオが初めて買った株式情報誌。

その片隅に記された、とある四文字が人知れず怪しく光っていた。

        信用取引

続く。

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